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  魔法使いたちの憂鬱

       第二十八話 ランクアップ

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/1.目が覚めて(神崎良)

「う……」
 瞼を開けた瞬間、強い光を感じて、俺は思わず呻き声を零した。

「目が覚めた?」
「え、はい」
 午後の日差しに細めた瞼の向こう側、そこには俺の顔をのぞき込む会長さんの顔があった。って、あれ? なんで、会長さんの背景に青空があるんだろうか、って、会長さんの顔がやけに近いというか、って背中に固い感覚があるのに、頭には柔らかい感触があるのは何でだろうって……あれ?
 
「って、え? あ、あれ?!」
「こら、動かないの」
 会長さんに膝枕してもらっている。その事実に気付いて、慌てて飛び起きようとした俺の頭を、会長さんが両手で押しとどめた。

「大人しくしてなさい」
「え? いや、でもですね」
「気を失うほど疲れてるんだから、無理しては駄目よ」
「気を失う……って、あ、そうか」
 そう言われて、ようやく俺は自分が意識を失ってしまっていたことに気がついた。そうだ、俺は会長さんと魔力交換をしようとして……そして倒れたのか。

「あの、会長は大丈夫なんですか?」
「ええ。今はね」
「今は?」
「私も少し気を失っていたみたい」
「え? じゃあ!」
「大丈夫よ。こうして神崎さんを看病できるぐらいにはね。だから心配しないで」
 そう言って微笑む会長さんの表情はとても穏やかで、どことなく血色も良さそうだった。その事に安心してほっと息をついたのも束の間、胸の中に失意の痛みがじわりと滲む。

「あの、会長」
「ん? どうしたの?」
「結局、魔力交換は……失敗なんでしょうか」
 俺も会長さんも二人とも意識を失って倒れてしまったのなら、やっぱり結果は失敗なんだろう。最早、慣れたこととは言え、残念に思わないわけじゃない。そんな失意の滲む俺の言葉に、しかし、会長さんは穏やかな表情のまま首を横に振った。

「大丈夫よ」
「大丈夫?」
「そう、失敗なんてしていないもの。わからない?」
 そう言いながら会長さんは掌を、そっと俺の胸に押し当てる。

「ほら、ここ」
「え? あの?」
「うん。大丈夫、ここにあるのは私の魔力。間違いないわ」
「私の魔力って……そんなこと、わかるんですか?!」
「ええ。勿論」
 俄には信じがたい発言を、ごく当たり前のことのように言ってのける会長さんだった。魔力交換の最中なら確かに他人の魔力の流れを感じるのは当たり前だけど、でも、交換が終わって自分の中に入ってしまった誰かの魔力を感知するなんて真似は普通は出来ない。会長さんと龍也に関しては人に出来ないことをやってのけると分かっているのだけれど、それでも、やっぱり驚いてしまった。
 そんな俺の驚愕の声に、会長さんは優しく微笑んでから、今度は彼女自身の胸に手を置いた。

「だから、あなたの魔力もわかるの。うん、きちんと私の中にあるわ」
「……そう、ですか」
 ……良かった。
 会長さんの言葉に、胸に広がりかけていた失望と驚きを押しのけて、安堵の思いが満ちていく。綾とレンさん。物心ついてからは、龍也と霧子と佐奈ちゃんの三人だけとしか成功しなかった行為が、ようやく、また別の誰かと成功することができた。それに……。

「嬉しそうね」
「はい。正直、凄く嬉しいです」
 そう、魔力交換ができたのは勿論嬉しいけれど、今目の前で微笑む会長さんの顔からは、あの思い詰めたような表情が消えてくれているのが、嬉しくて。だから、俺は一度目を閉じて、深々と安堵の息をつく。その刹那、瞼の裏に浮かぶ空を覆う大樹の影。

「あ」
「どうかした?」
「あ、いえ。どうかした、というか、なんというか」
 大事なことをすっかりと忘れてしまっていた。そもそも、俺も会長さんも気を失ってしまっていたのに、どうして魔力交換が成功したんだろうか。それに気を失っている間に、おかしな夢を見た。今、見上げる空にある朧気な影を滲ませる世界樹ではなく、もっとはっきりとそびえ立つ大樹のあった風景。アレは本当に夢だったんだろうか。いや、あんな光景は世界のどこを探してもあるわけがないから、夢に決まっているんだけど……でも、なんだろう。なにか、妙に引っかかるものがある。安堵した途端、次々と、そんな疑問が頭の中に浮かぶ。

「あの、会長」
「何かしら」
「俺、気を失っている間なんですけど、夢を見ていました」
「……ふふ」
 俺の問いかけに、会長さんは何故だか、嬉しそうに目を細めて小さく笑った。

「あの、会長?」
「ごめんなさい。そうね、やっぱり夢だって思うわよね」
「じゃあ、アレは夢じゃないんですか?」
 というか、会長さんは俺が見た夢がどんなものなのかわかっているのだろうか。口ぶりから察するに、わかっているみたいだけど……。

「そうね。ちなみにあなたが見たのはどんな夢だったの?」
「えーとですね」
 思い出そうとして、寝起きの頭の真ん中が、ずきり、と鈍い痛みを放つ。それに気付いたのか、会長さんがそっと俺の額に手を置いてくれた。優しく置かれた手の温もりに、差し込むような痛みが、解けるように消えていく。

「無理しないで良いわ。ゆっくりでいいから」
「あ、はい」
 いつになく優しい会長さんの声に、なんとなくむず痒いものを覚えながら、俺はお言葉に甘えてゆっくりと記憶を手繰った。夢で見た光景、朧気だけど確かに記憶として脳裏に残っているものがある。

「大きな樹がありました。多分、世界樹だったんだと思います。あと無茶苦茶な数の葉っぱが空を覆っていて……あ、その葉っぱが光ってたんです。そんな場所の夢だったんですけど」
「そう。見たのは、それだけ?」
「ええと、いや、違います。そこに会長も居ました」
 気の遠くなるぐらいに大きな大きな樹の下で。一人、世界に向かって問いかけ続けていた女の子が、居た。そんな俺の答えに、会長さんは満足そうな笑みを口元に浮かべて、その手を今度は俺の額に置いた。

「じゃあ、それは夢じゃないわ。だって、ちゃんと会ったでしょう? 私たち」
「……はい」
 そう。あの場所で、確かに俺は会長さんと出会って……その手をとった。そして会長さんの言動からすると、彼女も同じようにあの風景の中で、俺と出会ったんだろう。つまり、アレは夢じゃなくて……いや、夢なのかもしれないけれど、そうだとしても少なくとも俺と会長さんはあの光景を共有していたということになる。

「会長が教えるって言っていた感覚って……あの夢のことなんですか?」
「そう。あれが私が教えたかったもの」
 頷いて、会長さんは少し目を細める。嬉しそうに、でも、少し寂しそうにも見える眼差しで、彼女はその手を俺の額に置いた。

「ずっと……誰かに見て貰いたかったものよ」
 呟くような声が、少しだけ揺れた気がした。その声の響きに、思い出す言葉があった。あの夢の最後、朧気に揺れる光景の中で、彼女は確かに「やっと見つけた」って囁いていた。

「会長」
「何?」
「もう少し質問、いいですか?」
「勿論。いいわよ」
「アレは結局の所、夢じゃないんですよね」
「夢と言えば夢だし、違うと言えば違うわね。心の中にある風景と考えるなら同じだけど」
「はあ」
「よく分かってないって顔ね。いいわよ、難しい話は今度にしましょう」
 呆れたような、でもなんだか嬉しそうな表情のまま会長さんはそう言ってくれた。

「疲れてるんだし、今はあまり考えすぎない方がいいわよ」
「あ、でも、もう一つだけ質問していいですか」
「ふふ。どうぞ」
「あの夢の中で会長が子供だったのはどうしてなんでしょう」
「子供? 私が?」
「はい。確か、そうでした」
「……どういう事かしら」
 こくり、と小首を傾げて暫し考え込む。しかし、何故か次第に今まで類を見ないほどに穏やかだった会長さんの表情に、徐々に怒りのようなものが混じっていく……ような気がした。ああ、なんだかとっても見慣れた会長さんの表情だ。うん、凄く嫌な予感がしたりする。

「えーと。あの……会長?」
「ねえ、神崎さん?」
「はい?」
「ひょっとして、あなた、私をもの凄く子供っぽいと思っているんじゃない?」
「なんでそういう結論になるんですか?」
「あそこは、多分、私たちの心の一番深い場所だもの。相手に対する認識がそのまま形に現れたっておかしくはないわ」
 そう言うなり会長さんは、いきなり俺の鼻をつまみ上げ、そして軽く捻った。

「痛い、痛いですって!」
「何よ、このっ、人を勝手に子供扱いして」
「完全に言いがかりですよ、ってか、鼻をつまむな、鼻をっ!」
 ぶんぶんと顔を振って、会長さんの手から鼻を脱出させた俺に、会長さんは拗ねたように口を軽く尖らせながら息をついた。

「もう、夢の中でも私には意地悪なのね。あなた」
「言いがかりを付けられたあげくに鼻をもぎ取られかけた俺の方が、意地悪されていると思うんですが」
 軽く鼻をさすりながら抗議の声をあげるが、会長さんは俺が悪いと言わんばかりの態度のままだった。というか、耳の次は鼻を引っ張られるとは思わなかった。次辺り、目でもつつかれるんじゃないだろうか、

「いーえ、意地悪しているのはあなたです。人を勝手に子供扱いしないで」
「だから、してませんって。そもそも会長さんの夢では、会長さんは子供じゃないんですか?」
「当たり前でしょう。なんだって、子供になんて……」
 憤然と俺の言葉を否定しようとする会長さん。しかし、その言葉は不意に止まり、思考に沈むように会長さんの視線が宙に向いた。

「……会長?」
「ねえ」
「はい」
「私と貴方の身長でそんなに変わらないわよね?」
「ええ、まあ」
 正確に数値を比べた訳じゃないけれど、並んで歩いている時には目線は同じぐらいの高さにあった。いや、俺の方がぎりぎり高いような気はするんだけど、それは俺がそう思い込みたいだけなのかもしれない。閑話休題。

「それがどうかしたんですか?」
「……あの場所で、あなた、私に向かって身をかがめたのよ」
「身をかがめたって……ああ、そうですね」
 子供の会長さんと視線を合わせようとしていたんだから、そりゃあ必然的にそうなる。言われてみれば、あの夢の中で、確かにそんな行為をしたような気もする。そう頷いてから、会長さんの考えていることに気付いた。あの夢の中で、会長さんは俺が身を屈めるのをみたのなら、それは俺と会長さんの間にそのぐらいの身長差があったということで、つまりは会長さんの夢の中でも、やっぱり会長さんは子供の姿をしていたんじゃないかっていうことで。

「……」
 その事に気付いて、そして更に別のことに気付いて、俺はしばし無言のまま会長さんの顔を見つめた。
 あの夢の中で、あの樹の下で、会長さんがいつも幼い子供の格好をしていたのかどうかはわからない。でも、重要なのは会長さんがいつも子供なのかどうか、なのではなくて、それが会長さん自身がわかっていないことだった。あの場所で、自分自身の姿が子供なのか、今の姿なのか、会長さんは知らない。
 つまり、少なくとも、今まで他の誰かとあの光景の中で出会って、そして自分の姿のことを指摘されたことがないということになる。「ずっと誰かに見て貰いたかった」って、彼女が呟いたその場所で、今まで会長さんは誰にもあったことがなかったという事になる。その事に気付いて、自然、胸がズキリ、と痛んだ。

 何度も何度も魔力交換しては失敗してきた俺だけど、ひょっとしたら会長さんも同じ気持ちを味わっていたのかも知れないって、そう思ったから。それは確かに俺と会長さんでは悩みのレベルは違うのだろうけれど、でも、誰かと何かを共有しようとして失敗するっていう行為そのものは同じの筈で、そして、それを失敗してきたのも同じ。いや……会長さんの痛みの方がより深刻なのかも知れない。失敗ばかりしていたといっても、俺は綾達とは魔力交換に成功していた。でも、会長さんは違う。
 自分自身の姿がどうなっているのか知ることさえ出来きずに、ずっとあの場所に一人で居たというのなら、それはどのぐらい寂しいことだったんだろう。

「どうして分かったの?」
「え?」
 そんな想いにしばし言葉を失っていた俺に、不意に会長さんがそう問いかけた。

「だから、あなたが見たのは小さな女の子だったのよね?」
「ええ、はい」
「じゃあ、どうしてその女の子が私だってわかったの?」
「どうしてって……」
 どうしてだっただろう。少しだけ首を傾げて、そして直ぐに思い出した。目の前にある瞳。毅然としたその目が、あの夢の女の子と同じものだったから。だが、そんな台詞を口に乗せるのは、気恥ずかしくて俺はふと彼女から視線をそらした。

「……なんででしょうね。何となくだと思います」
「嘘ね」
 俺の言葉をにべなく切り捨てて、彼女は軽く俺の額を指で弾く。

「痛、痛いですって」
「嘘をつくからよ。ほら、さっさと白状なさい」
「嘘なんてついてないですよ」
「それこそ嘘ね。良さんって、顔に出るんだもの」
「ぐ」
「言っておくけど、抵抗は無駄よ? なんたって放課後まで時間はたっぷりあるんだから」
「それは拷問するという宣告ですか」
「ふふ、どうかしら」
「あー、非常に良い雰囲気の所、誠に申し訳ないが」
「え?」
「あ」
 不意にかけれた声。それに振り向けば、そこには。

「午後の授業中に、優雅に膝枕をしている理由を教えて貰えるかな? 二人とも」
 腕組みして俺たちを見下ろしているレンさんの姿があったのだった。

/2.お説教(神崎良)

「この場合、向上心を誉めるべきなのか、規律違反を叱るべきなのかどちらなんだろうな」
 やれやれ、と溜息をつきながら、レンさんが苦笑する。そんなレンさんに対して、俺と会長さんは深々と頭を下げて、何度目かの謝罪の言葉を口にしていた。

「申し訳ありません」
「済みません」
 そうやって俺たちがレンさんに謝っているのは、放課後の「生徒指導室」。屋上でレンさんに見つかった後、俺と会長さんはそれぞれの教室に戻り、そして改めてここに呼び出されたのだった。去年の会長さんとの騒動のときに、一度だけ呼び出されたことがある場所だったけれど……まさか、もう一度入る羽目になるとは。まあ、会長さんと二人して授業をサボっているところを現行犯逮捕されてしまったのだから言い訳の仕方ないのだけど。
 部屋の中央に置かれた無機質な白い机とパイプ椅子。俺と会長さんは並んでそこに座りながら、机越しにレンさん『達』と向かい合っていた。そう、向かいあっている相手はレンさん一人ではなくて……

「もう! こっそりと授業サボってまで教えるなんて」
 レンさんの横に立って、そんな憤慨の言葉を口にするのは妹の綾。そして、その背後にも俺たちに非難の視線を浴びせてくる面々が控えている。

「綾さんが怒るのも尤もです。やり過ぎですよ、セリア」
「誘いに乗る良も悪いわよ。まったく、体調が悪いから保健室行くって言った癖に」
「気持ちはわかるけど、やっぱりサボるのは良くないと思うよ」
「良先輩……サボるんだったら、私も呼んで下さい」
 篠宮先輩、霧子、龍也、そして佐奈ちゃんと言った面々が、呆れと怒りの滲む表情でお説教をしてくれていた。いや、最後の佐奈ちゃんのお小言は、ちょっと説教と言うには方向性がずれているような気がしなくもないけれど。

「……って、あの、レンさん?」
「なんだ?」
「いや、授業をサボってしまったのは事実ですし、こうして指導されるのはわかるんですけど……なんで、綾達がいるんでしょう?」
「ん? いや、だって放課後に試験をする約束だっただろう? だから、呼んだ」
「呼んだって」
 いいのか。そんな軽いノリで生徒の指導に生徒を参加させて、いいのか。
 と、思わず突っ込みそうになったけれど、口をつきそうになったその言葉をぐっと堪えて飲み込んだ。何にせよ、今は文句を言える立場ではないのだ。そして、そんな俺の心情はお見通しなのか、レンさんはニヤリと愉しそうに口元を緩めた。それから、背後の綾や霧子の方に視線を向けてから、わざとらしく肩をすくめた。

「しかし、授業をサボって屋上で逢い引きか。教師としては嘆くべきところだが、母親としては喜ぶべきなのかな」
 いや、それはどっちの立場でも嘆いて叱責しないと駄目でしょうが。と、また危うく突っ込みそうになった言葉をすんでの所で飲み込んだ。ここは余計な突っ込みややぶ蛇になるだけだし、怒られることをしたのだから、黙って反省していなくては……。
 と、俺が沈黙を守ることを決めたその傍らで、しかし、レンさんの背後の面々の空気が、ざわり、と揺れた……気がした。

「母さ……先生」
「ん?」
「今、逢い引きって、言いました?」
「うん。言った」
「それ、どういう意味ですか?」
「逢い引きは逢い引き。言葉そのままの意味だよ。二人して隠れてであっていちゃついていたってだけだ」
「いちゃ?!」
「いやいやいや、違うでしょう」
 流石に黙って入られずに、俺は慌ててレンさんの言葉に割って入った。

「授業は抜けましたけど、屋上では魔法の練習しかしてません」
 確かに授業をサボったのは悪いけれど、でも、目的はあくまで魔法の練習のためであって、断じていちゃつくような事が目的じゃない。流石にここは反論しておかないと、そこまでして教えてくれていた会長さんにも悪いと思う。だが、俺の反応にレンさんは愉しげな笑みを浮かべたまま、悪びれる様子もなかった。

「ふーん。へー。ほー」
「な、何ですか、その笑いは」
「良。こういう時に必死になればなるほど疑惑は深まるんだぞ?」
「疑惑も何も。本当に魔法の練習しかしてないんですってっ」

「兄さん? 本当にいちゃついてたの……?」
「だから、違うっての」
「良。正直に言いなさいよ? 自白した場合には情状酌量してあげなくもないから」
「……あのな」
 欠片も酌量の意志が欠片も見えない綾と霧子に、俺が頭を抱えると傍らから龍也が「あの」と声を上げてくれた。

「僕は良のこと信じます」
「龍也……」
「うん。良はそんなことしないよね」
「ああ、うん。ありがと」
 龍也のあまりに暖かな態度に思わず涙腺が緩みかける。流石は親友。

「あ、こら。龍也の裏切り者」
「また速水先輩は、美味しいところを……」
「……こういう所、速水先輩は隙がないです」
 などと、俺たち下級生が騒々しく騒いでいる傍ら、落ち着いた様子で篠宮先輩がレンさんに声をかける。
 
「神崎先生」
「うん?」
「神崎先生は何か目撃されたんですか? その……逢い引きと表現するようなことを」
「うん。見た」
「何を、でしょう?」
「だから、この二人がいちゃついてた所を」
「目撃したんですか……?」
「ああ、ばっちりと、情事の現場を、この両目で!」
「堂々と嘘を言わないで下さい、嘘を。あと情事とか言わない!」
 そう言って俺が再び突っ込むと、レンさんは「む」と気を悪くしたように唇を尖らせた。

「嘘とは失礼だな」
「だって、嘘じゃないですか」
「むー。だって、いちゃついてたじゃないか」
「イチャついてなんかいません」
 何故か自信をもってあくまで「俺と会長さんがいちゃついていた」と主張するレンさんに、綾の表情に不吉な暗雲が広がっていく。

「やっぱり、兄さん、いちゃついてたのね……?!」
「だから、いちゃついてないって」
「だって、母さんが、見たって」
「こういう時のレンさんの言葉を真に受けるんじゃありません」
 多分、レンさんも俺や綾の反応が愉しくて煽っている節があのだろう。だから、目が紅く光るぐらいに臨戦態勢に入るんじゃありません、綾。

「うー、でもでも」
「あのな、本当に何も……」
 していない。そう言おうとした言葉は、しかし、レンさんの声に遮られた。

「膝枕」
「うっ」
「鼻つまみ」
「うう?」
「頭も撫でてたかな」
「ううう?」
「胸にも手を置いていたな。確か」
「ううう!?」
「どーみても乳繰りあっているようにしか見えなかったけどなー。アレは私の目の錯覚なのかなー」
「うううう?!」
 レンさんの指摘に、思わず言葉を失ってしまった。いや、本当にいちゃついていた覚えはないのだけど、レンさんが言っている内容自体は嘘ではないわけで、なんだか、こうして改めて指摘されると他人から見るとひょっとしたらいちゃついているように見えてしまったのかも知れないなんて言う気になってきたりするんだけど……。というか、どこから見てたんだ、レンさん。

「兄さん?」
「え?」
「どうして言葉に詰まってるの……?」
「あ、いや」
 レンさんの指摘に狼狽える俺に対して、綾が向ける視線が加速度的に剣呑さを増していく。そして俺の態度に不審を抱いたのは綾だけではないようで。

「ふうん。言葉に詰まるんだ、良」
「良。違うよね? 僕、信じてるよ……?」
「良先輩。大丈夫、私は気にしませんから」
「いやいやいや、だから違うんだぞ?!」
 最早、有罪判決は確定と言わんばかりの雰囲気の中で、しかし、と俺はまだ無罪を訴える。

「本当に、魔法の練習以外のやましいことなんてしてないんだって」
「私は兄さんと魔法の練習するときに膝枕をしてあげたことも、してもらったこともありません」
「膝枕と練習を直結させるんじゃない! だから、それは俺が倒れたからで」
「ほう。倒れると乳繰りあわないといけないのか。じゃあ、今度からそうしよう」
「レンさん!」
「まあ、冗談はこの辺にしておこうか。良で遊ぶのはうちに帰ってからにしよう」
「冗談? 冗談って、どこまでが冗談なの? 母さん?!」
「あー、紅坂」
 騒々しい俺たちに向かってレンさんはそう言って笑ってから、少しだけ表情を正した。そして、一人静かに佇んでいた会長さんに向き直る。会長さんは、今までレンさんや、綾達の言葉に一切の反論をすることもなく、ただ落ち着いた様子でレンさんの言葉を待っていた。いつもの会長さんなら絶対にどこかで反論をしていたと思うのだけど……あるいは、それは彼女が反省の態度なのかも知れない。

「紅坂。後輩に魔法を教えることは責められることではないが、今日のは軽率だったね」
「……はい。申し訳ありません」
 静かに諭すようなレンさんの言葉に、会長が神妙な表情を浮かべて頭を下げる。それに習って俺も深々とレンさんに頭を下げた。

「済みません。軽率でした」
「ん。まあ、本当に逢い引き目的なら問題だが、事情もわかっているしね。向上心の表れとして、二人とも反省文で済ましておこう。我ながら大甘裁定だが、まあ、日頃の生徒会活動にも免じよう」
「はい。ありがとうございます」
「以後、気をつけます」
 深々と頭を下げる俺たちに、「宜しい」と言ってレンさんは笑った。

「まあ普段なら、あとは清掃でも命じる所なんだが……」
「いいんですか?」
「また二人っきりにして、いちゃつかれると困る」
「あのですね……」
 まだそのネタで引っ張るつもりか、この人は。思わず頭を抱える俺に、レンさんは尚も楽しそうに笑う。

「ああ、言っておくが、学内では程ほどにしろと言う意味だぞ?」
 どういう意味ですか、それは。思わず突っ込みそうになったけれど、今の状況ではやぶ蛇になりそうだったので、ぐっと言葉を呑んで我慢する。

「しかし、今回のことはセリアの反則ですね」
 レンさんからの指導が一段落したのを見て、今度は篠宮先輩も少し怒ったような表情で、会長さんに向かって言った。

「先ほど綾さんも指摘していましたが、放課後の試験のために午後に神崎さんを教えるというのはルール違反でしょう」
「そうね。ご免なさい」
 篠宮先輩の指摘に、会長さんは素直に頭をさげて、そして一同を見回して「ごめんなさい」と再び頭を下げる。

「だから、今回は私の負けを認めます」
「え?」
 彼女が何を言ったのか、おそらく瞬時には誰もわからなかった。一瞬の間を挟んで、最初に反応を見せたのは綾だった。

「え? あれ……えーと、負けって?」
「お昼休みに決めたでしょう? 放課後の試験のことよ」
「ええ、はい」
「だから、今回は私の負け。言ったとおり神崎さんへの命令権も放棄します」
「……」
「……か、会長?」
 あまりにも潔い負けの認めっぷりに、みんながなかば呆然と彼女を見つめた。勿論、俺もあまりに会長さんらしくない態度に、あっけにとられてしばし言葉を紡げなかった。

「セリア?!」
 その中で、今度は篠宮先輩が一番最初に我に返った。彼女は慌てて会長さんに駆寄ると、手を取って、脈を測って、そして額に手を当てる。

「セリア? セリア?! 大丈夫なんですか? やっぱりどこか体の具合が……?!」
「大丈夫だから落ち着きなさい」
 あまりに「らしくない」会長さんの言動は、篠宮先輩はどうやら会長さんの体調が原因だと思ってしまったらしい。そんな篠宮先輩に、会長さんは深々とため息をついた。

「私だって、素直に負けを認めることぐらいあるわよ」
「そんな……セリアは負けを認めるにしても、絶対に、素直になんて認めないのに」
「とりあえず、鈴とはこれから、じっくりと話し合う必要がありそうね……」
 そう言って篠宮先輩の頭を軽く小突くと、会長さんは改めて一同を見渡す。

「ということで、神崎さんへの命令権を放棄します。でも、神崎さんに魔法を教えるのは続けさせて欲しいのだけど、構わないわよね?」
 その提案に綾達は顔を見合わせて、考える様子を見せたけれど、しかし、結局誰からも反論は出なかった。綾の最初の剣幕から考えると、会長さんの反則行為にペナルティを与えるぐらいの意気込みだったのかもしれないけれど、会長さん自身が進んで自分へのペナルティを提示してしまったのだから、それ以上のことは要求しづらいのかもしれない。
 そんな一同の反応に満足したのか、会長さんは一人頷いてから、今度は俺に向かって言葉を投げる。

「それから……、良さん」
「は、はい」
 今度は何だろう。また何か「らしくない」提案が飛んできたりするのだろうか。そんな予想に思わず身構える俺だったが、会長さんが次の言葉をかけるより先に、綾の声が勢いよく割り込んできた。

「ちょ、ちょっと待って下さい!」
「な、なんだ? どうした綾」
「『なんだ?』じゃ、ありません! 会長!」
「なにかしら」
「今……、今、兄さんのこと、なんて呼びました?」
「普通に呼んだだけよ?」
 どこか詰問する口調の綾に、会長さんは済ました表情で微笑みながら応じた。

「普通に名前を呼んだだけ。良さん、って」
「!」
「あ」
 その会長さんの発言をうけて、生徒指導室の空気が、一瞬にして張り詰めた……気がした。いや、張り詰めた理由はわからないが、ともかく、誰もがそれぞれの感情に絶句したように思う。そう言う俺も名前で呼ばれていた事に今更ながら気付いて、どういうことか、としばし固まってしまった。だが、その硬直はすぐに、軽く腕を引く感覚に解かれる。

「ねえ、良」
「龍也?」
 腕を引く感覚に振り向けば、そこには穏やかな笑みを僅かに引きつらせる龍也がいたりした。

「どういうこと、かな」
「どういう事って、いや、俺に言われても」
「本当に、午後は魔法のことしかやっていないんだよね?」
「ああ、うん」
「そっか。うん、そうだよね? 信じてるからね……?」
 というか、にこやかな笑顔を浮かべている龍也だけど、なんだか目が笑っていないような気がするのは俺の気のせいだろうか。いや、きっと気のせいだ。気のせいだと切に思いたい。

「そんなに騒ぐことかしら」
 当の会長さんといえば、そんな一同の反応に涼しげな表情をうかべたまま、小首を傾げて俺に視線を向けた。

「綾さんのことはずっと名前で呼んでいるわけだし、別におかしくはないでしょう」
「ああ、なるほど」
 つまり、ようやく綾と同等にまで格上げしてもらえた、ということなのか。そう納得して頷いた俺に、しかし、綾の容赦ない突っ込みが入る。

「兄さん! 普通に受け入れているんじゃありません!」
「なんで受け入れたら駄目なんだ?」
「な、何でって……、って、それこそ何でなんですか?!」
 俺の質問を無視して、綾は言葉の矛先を会長さんへと振り向けた。

「今日の午前では名字で呼んでましたよね?」
「ええ」
「じゃあ、どうして」
「あ、そう言えば、さん付けも固いかしら。『良くん』とかの方が良い? それとも『良』って呼び捨ての方がいいかしら。『良ちゃん』は流石に恥ずかしいけど……」
「どれも漏れなく却下です! というか、そういう事を聞いてるんじゃありません!」
 間髪入れずに答える綾だったが、完全に会長さんに遊ばれている。

「だから、どうしていきなり呼び方が変わるんですか?!」
「だって魔力交換もしたんですから、いつまでも名字では他人行儀でしょう?」
「ま、魔力交換?!」
「あ」
 その会長さんの発言に、大切なことをみんなに教えるのを忘れていたことを思い出す。そう、今日の午後、俺が会長さんに膝枕をして貰うことになった原因。我ながら非常に間の抜けた話だとおもうけれど、レンさんのお説教が続いていたので、その原因をみんなにまだ告げていなかったのだ。

「良、本当か?」
「本当なの? 兄さん?!」
 魔力交換をした。その発言に、流石にみんなが「呼び方」のことを忘れて、一斉に俺の方へと視線を向ける。とりわけレンさんが、真剣そのものの目つきで俺に向かって確認するように言った。

「良、本当に紅坂と魔力交換ができたのか?」
「あ、はい。本当です。本当に、成功しました」
「そうか」
 はっきりとした俺の答に、レンさんは大きく頷いてから、満面の笑みを浮かべて。

「良」
「はい」
「そ・う・言・う・大・事・な・こ・と・は・早・く・言・え!」
「す、済みませんって、痛い、痛い、痛いです」
 そう言いいながら、思いっきりほっぺたをつねるのだった。


/3.篠宮さんの憂鬱。(篠宮鈴)

「ふふ、一番大切な報告をいつまで経ってもしないんだもの。それは神崎先生も怒るわよね。今頃、またお説教かしら」
 魔法院から紅坂邸までの帰路。迎えにこさせた車の中で、セリアは騒々しかった放課後の出来事を思い出しながら、そう言って笑った。そんな彼女に私はため息を付きながら応じる。

「しおらしく神崎先生のお言葉を聞いているかと思ったら、そんな事を考えてたんですか」
「少しだけね。ふふ」
「随分と嬉しそうですね、セリア」
「そう見える?」
「それ以外に見えません」
 満面に笑みを浮かべておいて「そう見える?」も何もないものだ。本当にここまで機嫌の良いセリアを見るのは、いつ以来だろうか。いや、機嫌がよいというよりも、無邪気といった方が、今の彼女を形容する言葉としては近いのかも知れない。それぐらいセリアの気持ちを揺さぶることが……あったのだろう。

「本当に、彼と魔力交換をしたんですね」
「ええ」
「彼の方からの提案ですか?」
「私の方からよ。決まってるじゃない」
 私の問い掛けに、セリアはあっさりとそんな答を投げ返す。以前、「自分の方から魔力交換を持ちかけるのは嫌だ」と言っていたのは誰だっただろうか。全く。

「む。なによ、鈴。その物言いたげな眼は?」
「言いたいことは色々とありますけどね。それより、確認できたんですね?」
 何が確認できたのか、とは言うまでもない。本当に神崎さんがセリアの「同類」なのか。それを確認できたのか、という私の問い掛けに、セリアは声に押さえきれない喜色を滲ませながら、首を縦に振った。

「ええ。やっと、見つけたわ」
 見つけた。その言葉の意味を理解して、私は知らず息をのんだ。セリアが探していて、そして「見つけた」と表現するもの。それはつまり。

「では、彼はやっぱり……?」
「そう。良さんは、私と同じよ。少なくとも私と同じ、あの場所に立てる魔法使い。それは間違いないわ」
「そうですか」
 つまり、それは神崎さんがセリアと同じ「世界樹に連なる魔法使い」だと、少なくともセリア自身はそう判断したことになる。

 世界樹に繋がる魔法使い。
 世界樹と同じ場所に位置しながら、しかし、世界樹とは分かれた存在。カウルさまの説明によれば、私たちを世界樹の子供達だとするのなら、セリアは世界樹の兄妹という所だろうか。セリアがずっと探し続けていた自分の同類。それが見つかったというのなら……彼女がこれほどに機嫌が良い理由にも納得がいく。
 本当に久しぶりにみた、セリア心からの笑顔。その笑みに、心が満たされると同時に、ちくりと胸が痛む。それは嬉しさと同時に、それでもこみ上げてくる嫉妬の所為だろう。それを自覚して、私は胸中でため息をついた。
 あれだけセリアが求め続けていた人物、それが目の前に現れたかも知れないのだから、ただ、素直に喜んであげれば良いだけなのに。
 セリアが私に何度も何度も教えてくれて、でも、私には行けなかった場所。どんなに行きたいと願っていても、未だにたどり着けていない場所に、彼がたどり着いてしまった。そのことに、どうしても醜い感情のくすぶりを押さえきれずにいた。

「大丈夫よ。鈴」
「え? あ」
 そんな暗い感情を持て余す私を、不意にセリアは抱きしめる。

「貴方を置いてどこかに行ったりしないわよ」
「セリア」
「だから、そんな寂しそうな顔をしないの」
「……はい」
 まったく。どうして、こういう時のセリアは察しがよいのだろう。いつもはさんざんに私を振り回してくれるくせに。心の中で、そう小さく反抗しながら、それでも子供をあやすようなセリアの声に、私は安堵を覚えてしまう。本当に……我ながら未熟だと思う。
 そんな私の心情を見抜いているセリアは、しばらく優しく髪を撫でてくれていたが、ふと、何かに気付いたように「あ、そうだ」と声を上げた。

「ねえ、鈴」
「はい。どうしました?」
「良さんって、鈴の好みのタイプ?」
「…………はい?」
「だから、異性として神崎良という人物はどう映るのかしら」
「どうと言われても」
 いきなりの質問に、私は思わず眉をひそめた。そんな事を尋ねられても、正直な所、私は神崎さんを異性として見たことはないのだから。
 別段、彼のことを嫌いというじゃない。不器用で、周りに流されやすくて、でも誠実で一生懸命で、そしてセリアと喧嘩できるほどに意地っ張りな後輩。セリアが彼に対して特別な意識を向け始めている、という事実が彼に対する嫉妬を抱かせるが、しかし、それを除けば私がおおむね彼に対して好意的な印象を持っているとは思う。でも、それはあくまで後輩の一生徒として、だ。

「異性として神崎さんを見たことはありません」
「そう」
 正直にそう告げた私に、セリアはしばし考えるように宙をみて、それから確認するような口調で再度私に問い掛けた。

「でも、嫌いではないのよね?」
「そうですね。嫌いな性格ではありません」
「性格は及第点と。じゃあ、容姿は?」
「……どうでしょう。あまり男性の容姿を気にしませんから」
 私としてはセリアと一緒に居られるのなら、別段、異性に関心をもつ必要はないのだ。
 まあ、あえて言うのなら適度に清潔感は保って欲しい、ということぐらいだろうか。正直、カウルさまのように容姿どころか清潔さにまったく無頓着な人は遠慮したい。そうセリアに答えながら、ようやく私は彼女の問いかけの意味を理解する。

「セリア。まさかとは思いますが……」
「流石、鈴。察しがよいわね」
 私の言葉に頷きながら、セリアは嬉しそうに、はっきりと宣告するように言った。

「良さんは私の手元に置くことに決めました。だから、あなたが彼のことを嫌っていたら困るのよ」
「……そうですか」
 それはもう半ば予想していたこと。だから、驚かずに私はセリアの言葉を受け止めていた。
 つい先ほど、セリアは私を傍に置くことを宣言したばかりだし、ようやく見つけた「同類」を手に入れようとするのはセリアの性格から考えれば必然だろう。なら、自然と、私と神崎さんはこの先、ずっとセリアの傍に一緒に居ることになる。だから、私と彼の相性が、セリアとしては気になったのだろう。

「でも、セリア。もし、私が彼のことを嫌いと答えていたらどうするんですか?」
 別に意地悪する意図ではなく、純粋な疑問からそう尋ねる私に、セリアは事も無げに、こう言って笑ったのだった。

「勿論、何とかするわ。これから、良さんにはまだまだ教える機会が沢山あるんだから」
「それは彼を矯正するという意味ですか」
「ふふ、どうかしら」
「セリア。生徒会長としてはそこは否定して下さい」
「あら、生徒の矯正なら生徒会長の役目の範疇でしょう? 調教する、というのなら問題だけど」
「……」
 果たして、この発言の何割が冗談で、どこまでが本気なのだろうか。楽しげなセリアの笑顔に目を奪われながら、私は深々と、心の中で神崎さんに頭を下げるのだった。

 ごめんなさい、神崎さん。あなたの困った先輩は、まだまだ貴方を困らせるつもりのようです、と。

続く

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