<<お礼用Short Story>>

・休み時間の親友達(神崎綾) 18話時点での綾の心境。

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「綾のばか」
 お昼休み。
 中庭の片隅でお昼を食べながら、朝の事情を説明し終えた私に、佐奈は問答無用の口調で私にそう言った。

「ば、ばかって……どうして?」
「だって、危機感が足りないもん」
 いきなり「ばか」と詰られて面食らう私に、佐奈は静かに咎めるような視線を向ける。

「いい? これは由々しき事態なんだよ?」
「そ、そうなの……? でも、あれは会長さんのお詫びの気持ちだって」
 会長さんは、遊園地の出来事について謝ってくれんだし、車の中でもとりたてておかしな事はなかった。まあ、兄さんと口論一歩手前の調子になっていたけれど、それでも、楽しい登校時間だったと思う。そして、佐奈が危惧しているようなそんな様子は会長さんからは感じ取ることは出来なかった。


「そうかな」
「だって、良先輩と綾から聞く会長さんって、私たちが知っている会長さんから離れすぎてるもん」

「会長さんって、兄さんの前でだけ、子供みたい」
「それって、心を許してるって事じゃないの?」
「……う」

「でも、会長さんが兄さんを好きになる理由なんて……」
 兄さんには悪いけれど、そんな理由は思いついていない。
 思わず良いわけめいた台詞を口にする私に、佐奈はゆっくりと首を横に振って諭すような口調で言った。

「綾。誰かを好きになるのに、特別な理由は要らないんだよ? それに他の人のは理解できない理由で、好きになることだってあるんだから」
「うっ」
 何故か重みのある佐奈の

 そういえば、佐奈がどうして兄さんのことを好き……というか、そういう対象としてみているのか、よくわからない。
 いつか「綾が好きな人だから、私も好き」なんて事を口にしていたけれど、あながちアレは冗談ではないのかもしれない。

「桐島先輩は、良先輩との関係が長いから劇的に変化するとは思わないけれど……会長さんは危険だとおもう」
「うう」

「私、会長さんに勝てるところあるかなあ」
「あるよ」

「良先輩のこと、誰よりも好きなんでしょう?」

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